「目的地が無いとどこへも行けないのは人生も同じ」株式会社グッド・クルー代表 堀 哲郎インタビュー

株式会社グッド・クルーの代表である堀 哲郎に社長就任の秘話やそれに至った思いをグッキャリ編集部が聞いてきました!自分の夢を具体化する過程やそこからグッド・クルーの代表に就任するまでを語ってもらいました。


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埼玉県出身。工業高校卒業後、18歳で年射出成型機メーカーに入社する。設計技術者として5年間働いた後、23歳で投資不動産会社の営業職に転職。さまざまな経験を経た後、26歳で現D-POPSグループに入社する。2016年からは、グループ会社である株式会社グッド・クルーの3代目代表として就任する。

「僕には夢がなかった」

-堀さんは社会人になってから夢はありましたか?

堀:高校を卒業して、射出成形機メーカーに5年間勤めたあと、24歳の時に投資用不動産会社に転職しました。そこも2年間勤めて、営業に区切りをつけた後は、フリーターとして半年間くらい昼夜逆転の生活を送っていましたが、友人の言葉をきっかけにモバイル販売の仕事を手伝うことになりました。そのときの取引先が、現D-POPSグループの会社代表である後藤でした。

知り合ってすぐに後藤と一緒に飲みに行ったのですが、そのとき「夢ってなに?」と聞かれました。しかし、そのときの僕には、これといった夢はありませんでした。

当時は、会社設立に有限会社なら300万円、株式会社なら1,000万円が必要でした。でも後藤は僕と一歳しか違わないのに、自分でお金を貯めて会社を設立していたのです。
まだ「ベンチャー」なんて言葉がない時代、僕は「自分で会社を起こすってことができるんだ」と、後藤の行動力や志の部分に大きな感銘を受けました。そして夢を持っていなかった僕は、「後藤の下で成し遂げたいことを見つけるのもいいな」と思い、入社することに決めたのです。

-夢をどうやって具体化していったのですか?

堀:入社してすぐに、後藤から「夢を具体化しなさい」と言われました。僕は子供のころから純喫茶によく通っていたので、漠然と「カフェをやりたいな」と考えていました。

カフェというのは、常連になると地域のさまざまな情報を入手できる場で、自分もそういうコミュニティを作りたいと思ったのです。それについて語ったら、後藤から「じゃあ、どこに出すの?いつ出すの?」「それはいくらで出せるの?」と具体的なプランを聞かれました。しかし当時はインターネットなどありませんでしたので、出店の方法なんて見当もつきませんでした。

どこに出すか考えた挙句、中学生のとき遠足で行って気に入った鎌倉にすることにしました。とはいえ、当時の僕は年収が120万円程だったので、物件を探すのには苦労しました。年収120万円では、まともに相手をしてくれる業者はほとんどありません。

そんな状況でしたが、とある業者さんが良さそうな3階建ての物件を見せてくれました。すごく素敵な物件だったのですが、価格が1億2,000万円ぐらいだったので仰天したのを覚えています。当時、地元の埼玉で同じぐらいの大きさの物件なら、5,000万円くらいが相場だったので。とはいえ、夢の実現に必要な費用が明確になったことを考えれば、結果的には良い経験だったと思います。

その物件は結局まだ手に入れられてないのですが、幸運にも原宿の駅前にカフェに最適な物件が見つかりました。「原宿でカフェを僕にやらせてください」と相談したところ、代表の後藤は快諾。出店の準備として僕は千葉のパン工場へ行き、1ヶ月住み込みでパン作りの研修を受けました。そして研修後、晴れてベーカリーカフェをオープンしたのです。

「夢を叶えた第1号だから」

-念願のベーカリーカフェ、オープンしてどうでしたか?

堀:朝から晩まで働き詰めでしたね。過労が原因で、人生で初めて倒れてしまいました。(苦笑)せっかく倒れるまで頑張ったのですが、残念ながらベーカリーカフェは一年で閉店となりました。原宿は家賃が高く、カフェ経営を黒字にするのは難しかったです。

-ベーカリーカフェを閉じることになったあとは、どうされたのですか?

堀:会社としてはモバイルという主力事業があるため、ベーカリーカフェにこだわる必要はなかったのです。しかし、閉店は自分にとって大きな挫折の経験です。
ベーカリーカフェ閉店後は、「もうこれ以上夢は無いし、仕事を辞めよう」と思っていましたね。ですが、後藤から「次は人事をやってくれ」と言われたのです。

僕は採用担当すらもやったことがないので、なぜ人事に任命されたのか分かりませんでした。しかし、「お前は夢を叶えた社員の第1号だから」と後藤に後押しされたのです。さらに、後藤は続けました。「どうして、お前にカフェをやらせたかわかるか?」と。
「5年間、モバイル販売の店舗で結果を出し続けたからだ。出店した店舗は3ヶ月以内にすべて黒字にした。実績があったから、『信用貯金』があったから、任せられた」と言ってもらえました。
何かを成し遂げたり、実現したりするにはひとりでは出来ません。誰かの信頼や応援があってこそ、夢は叶えることができると言うことを若い人にもっと伝えていきたい、そういうことを伝えられる会社を作りたいんだ、と後藤は言いました。

そのためには「それを伝えられる人事が必要だ」と言われて納得して僕は人事の仕事に就くことにしました。

「初めての人事」

-初めての採用担当として、どのように対応されたのですか?

まずは、合同説明会に参加してみました。当時は採用のノウハウも会社の知名度もありませんし、なかなか人を集めるのに苦労をしました。採用担当として苦境に立たされている中、僕は戦略を練りました。

「国内のグローバル化」が必要だ、と考えた僕は留学経験のある学生を採用するために、国際就職フェアなどの合同説明会に参加を決めました。モバイルの販売は、当時、日本人相手だけでしたが、これから日本にもどんどん外国人が入ってきて、外国人相手のモバイルの販売やレンタルの事業が盛り上がると考えたからです。

大手企業や外資系企業が顔を連ねるなかで、D-POPSとしてポツンと参加し、学生に向かって「キミに夢はあるのか?」と演説をしてみたんです。
海外経験のある学生は、「夢」や「キャリア」という言葉に感度が高いだろう、と考えたからです。予想は当たり、名も知れぬ企業のブースに学生が集まり始めました。

「海外へ行くだけがグローバルではない」と僕の持論を展開すると共感してくれる学生も増え、採用活動は結果としてうまく行きました。

他の大手企業の方が「なんだなんだ」とうちのブースに見に来たりもしていましたね(笑)

そうして採用した人たちを今度は研修して、教育しなければなりません。人事は採用だけではなくて、研修して、配属先を考えて、また次の年の採用計画を立てて……となんてやることが多いんだと思いましたね。

-実際に採用した方へどんな研修をされたのでしょうか?

まずは「夢」の具体化をさせました。僕の「夢はあるか?」という演説を聞いて入ってくれた人の中でも具体的な夢がある人、ない人がいました。
夢がない、と言っても本当は何かあるんですよね。「親を幸せにしたい」とか「犬が飼いたい」とか。そういう漠然とした夢を具体化する作業を一緒にやりました。

「親の幸せって何?何が幸せ?」とか「どんな犬を飼いたいの?犬種は?」などと言ったように。そうすると夢がどんどん具体化でき、具体化した夢を実際に紙に貼っていくんです。家なら欲しいと思う家の写真を雑誌から切り抜いて。クルーザーを実際に見に行ったこともありました。

これをドリームプロデュース研修と呼んでいて、人生の目的地を決める過程としていました。目的地が無いとどこへも行けないのは人生も同じなんだよ、と言うことを僕が昔、後藤に教えてもらったように若い人たちにも伝えていきたいと思ったんです。

さらに、「青春」をテーマにした研修も行いました。人が成長するときって没頭しているときなんですよね。辛いことも楽しいこともあるけど、その物事に集中して没頭するから成長できるんです。それって「青春」ってことじゃない?とある日気が付きました。

なので、採用基準も「青春」を経験した人に絞ったり、研修でもダンスをやったりするようなものにしました。そうこうしているうちに、もう人事も長くなってきて、僕のなかにある思いが渦巻き始めたんです。

ひとつは、人事は採用して研修して配属先へ送り出してしまうとあとは見守るしかなく、もっといろいろな事を教えてあげたいな、という気持ちと
もうひとつは、そろそろ後任に席を譲ったほうがいいなという気持ちです。

もともと後藤と「学校みたいな会社を作りたい」という思いがあり、教育に興味がありました。社会人になると学びを得る場所が少なくて、働きながらとなるとより難しくなります。そういった状況を改善したいのと、人事として目標にしていた社長の最終面接通過率92%というのを超えて、ついに93%を達成したのをきっかけに人事から退いて、当時から経営企画部長として携わっていたグッド・クルーの社長をやらせて欲しい、と後藤に頼みました。

グッド・クルーは当時からD-POPSのグループ会社としてあり、D-POPSに人材を派遣する機能を担っていました。グッド・クルーの新卒採用も担当していましたが、人生に活路を見いだせていない人や、自分の進むべき道がわからなくなっている人にたくさん出会いました。そんな人たちをなんとかしてあげたいなと思ってたんです。

後藤は快諾してくれて、当時のグッド・クルーの社長は便宜上、後藤がやっていたのですが代わってやらせてもらえることになりました。

「学校のような会社を作りたい」


-グッド・クルーの代表になられて、まず何から行ったのでしょうか?

堀:まず、全員の話を聞くところから始めました。一人ずつ面談を行い、それぞれ1時間半かけて愚痴や不満を含めて何でも聞き、それらをすべてデータ化しました。もちろん、夢やキャリアプランについても、具体的にこれからどうするか話し合いました。面談の内容をもとに、解決策を検討して実施したものです。

外部の研修会社と提携して教育環境を整えるなど、施策は色々やりました。その結果、現場で活躍する社員が増え、人材支援先の取引先から「直接雇用したい」という要望も多くなりました。

-今もグッド・クルーで行われている研修や教育はありますか?

堀:グッド・クルーでは今年から始めた「成長実感プログラム」という、3年かけて行う研修制度があります。1年目、2年目で内容が変わっていき、3年目からは自分のキャリア形成として次のステップを考えていきます。3年間の間に毎月一回、合計8時間を36回実施します。

また、グッド・クルーに入っている間は、資格取得の支援を行います。資格取得にかかる費用はグッド・クルーが負担し、「簿記」「販売士」「iTECSコード」などを、全員に必ず取ってもらっていますね。僕が人事出身ということもあり、どういった資格が有利なのかなど、履歴書を見られるポイントについて明確にアドバイスすることができます。

-これからグッド・クルーをどうしていきたいですか?

堀:今までなかった、中途採用のインターン制度を作り上げてみたいです。第二新卒者など、さまざまな理由により自信が持てない求職者にとって、救いの場になれたらいいですね。仕事を通して自分の方向性を見出して欲しいです。

育成を軸とした雇用を作りたいとも思っています。なおかつ、インターンとしての要素を高めることで、会社に依存することなく、自分でしっかり生きていく術を学んでいってもらいたいです。

今後は、働くメンバーのセカンドキャリアとしてソフトウェア開発やECサイト運用ができる人材など、WEBやエンジニアの領域に挑戦していく予定です。特にエンジニアまでとはいかなくても、IT系に関わっていきたい人は多いため、そういったメンバーを増やしていきたいという考えがあります。

また、グッド・クルーの社員はもちろんですが、それ以外の主婦(夫)やシニアの方の仕事ができる環境をもっと増やしていきたいです。「雇用創出の最大化」という目標があり、コロナ禍で「学生のアルバイト先がなくなってしまった」とか、そういったことが起こらないように、しっかりと雇用を補えるような環境を作っていきたいのです。

-どんな人にグッド・クルーに来てほしいですか?
堀:まず、「自分に制限をかけず、いろんなことに挑戦したい」という人たちと一緒に仕事をしていきたいですね。僕らはやっぱり、「人」を扱いながらビジネスを展開していくので、人の可能性をもっと広げていきたいです。今後もIT化によって無くなる仕事というのは、当然出てくると思います。でも、それ以上に、新たに生み出される仕事もたくさん出てくると思うのです。その新しい仕事に一緒に挑戦できるメンバーを、もっと集めていきたいなと思っています。